FEATURE
原 由子

20人の書き手が筆を取り、原 由子がメインボーカルを務めた楽曲やミュージシャン原 由子について語る特別企画。
原 由子の45年のキャリアを様々な角度から徹底解剖!
時制を超えていく原 由子さんの歌声 文=高木 "JET" 晋一郎
原 由子さんの歌声を聴くと、「時間」という概念が溶けていくような感触を覚えます。相対性理論的にいえば声が光速を超え時空が……すみません、これは冗談ですが、これほどまでにずっとエバーグリーンな歌声を持つ人がいるのでしょうか。最初期から現在まで、齢を重ねても、キャリアやライフステージの変化があっても、原さんの歌声はずっと優しい表情を浮かべています。そのある種の「超越者」的な不変性と普遍性には驚かされます。
歌声にそういった性質があるからこそ、「人生の散歩道」のように、主体や対象が、「リスナー」「現在の自分」「過去の自分」「自分の子ども」など無限に広がり、時制をも超えるような曲であっても、そこに齟齬を生まずに、説得力を持たせ、誰もが「わたしごと」として受け取ることができるのではないでしょうか。桑田佳祐さんの作詞である「北鎌倉の思い出」のような、時間をパースペクティブに表現する曲でも、その時間の超越性を、歌声として担保しています。桑田さんが歌ったら、当然ながらもっと異なった感触があったでしょう。
個人的な話になりますが、亡父は桑田さんと原さんの結婚披露宴に行ったことが自慢でした(当時のファンクラブ会員が招かれたそうです)。「人生の散歩道」をどのように聴いたかを話しておけばよかったなと、このテキストを書きながらふと思いました。そして、またいつかその話ができるように感じるのも、原さんの歌声が時間を超えるからなのでしょうね。