SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

FEATURE

原 由子

20人の書き手が筆を取り、原 由子がメインボーカルを務めた楽曲やミュージシャン原 由子について語る特別企画。
原 由子の45年のキャリアを様々な角度から徹底解剖!

平熱の流儀文=三宅正一

2005年10月、サザンオールスターズは2枚組30曲という大作『キラーストリート』をリリースした。桑田佳祐が「サザンとしてできることを全てやり尽くした」と語ったほどの集大成であり、実際にバンドはその後、2作のシングルを出したのち2008年から約5年にわたる活動休止へと向かう。重い1枚だ。その中に、原 由子が歌うふたつの楽曲が静かに据えられている。

「山はありし日のまま」は、鎮魂の歌だ。変わらずそこにある山と、永遠に戻らない友の対比が、一行で全てを語り尽くしている。歌詞の抒情は濃い。しかし原 由子の声はそこで、感傷を押しつけることを静かに拒む。ただ傍にいる。それゆえに、聴き手の胸の奥が静かに、深く開いていく。

「リボンの騎士」はR&Bと都会的な夜気が交差している。歌詞はほとんど直截な官能の世界だ。疲れ果てた男を丸ごと受け止める女性の、その途方もない包容力が主題である。そして原 由子の声は、それを不思議なほど清潔に響かせる。平熱の品格と艶が、歌を包み込んでいる。

死を悼むときも、官能を歌うときも、声の温度がほとんど変わらない。その一定の体温こそが、彼女の歌が時代を超えて人の内側に届く理由ではないかと思う。国民的バンドの情熱や過剰さを、紅一点、静かに、しかし確かに受け止め続けている人としての、歌うたいとしての器。あっぱれ、だ。

山はありし日のまま

リボンの騎士