SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

FEATURE

原 由子

20人の書き手が筆を取り、原 由子がメインボーカルを務めた楽曲やミュージシャン原 由子について語る特別企画。
原 由子の45年のキャリアを様々な角度から徹底解剖!

当たり前のようにそこに居るひと 文=渡辺 祐

2002年のアルバム『東京タムレ』は、女性歌手が歌った歌謡曲/和製ポップスを歌っているわけですが、まずなんたって選曲がすんばらしい。全曲佳曲。オリジナルは1961年から1970年まで。原さんの年齢でいえば5歳から14歳頃ということになるのかな。そういう場合、往々にして「あの懐かしい名曲をカバーするぞ」というフガフガした鼻息が感じられるものですが、原さんの歌声からは、そんなフガフガは聴こえてこない。張りきらない、こぶし回さない、無理強いしない。あと、ちょっと声小さい。アルバムのライナーで安田謙一さんも書いているように「当たり前のようにそこにある、そんな歌」。例えば、クラスにひとりはいるような、あんまり目立たないけど気が利いている女の子とか、商店街のてんぷら屋さんの歌のうまい看板娘とかが歌っているような感じとでも申しましょうか。
あらためて聴いてみれば、その心地よい心意気と、元々の曲の素敵さが空中にただよいだす。飽きない。100回聴ける。「愛のさざなみ」(タモリ倶楽部のコーナーじゃないよ)のカナシミは、ちょっと艶めいた昭和の夜の残像から解き放たれた。斎藤 誠さんアレンジによるイントロが時代劇のオープニングみたいでたまらん味わいを出している「夏の日の想い出」の哀切がオレの冬の海をざわつかせた。
当たり前のようにそこにある歌を当たり前のように歌うひと。サザンでもそうですね。

愛のさざなみ

夏の日の想い出