SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

FEATURE

原 由子

20人の書き手が筆を取り、原 由子がメインボーカルを務めた楽曲やミュージシャン原 由子について語る特別企画。
原 由子の45年のキャリアを様々な角度から徹底解剖!

2人だからこそ描くことのできる歌への信念文=谷岡正浩

「恋の歌を唄いましょう」と「涙の天使に微笑みを」の2曲は、どちらも屈指の名曲として知られている。前者で特徴的なのはサビにおけるボーカルとメロディ設計だ。サビの歌詞のなかで〈幸せ〉〈私〉〈優しい〉〈欲しい〉と適切に〈し〉という言葉(音)を配置し、拍に対して食い気味に強くアクセントして歌うことで微妙にリズムにズレが生じ、それが歌詞における主人公の気持ちを増幅させている。そして後者は、NHK朝の連続テレビ小説『甘辛しゃん』の主題歌として書き下ろされた。イントロは2段階の構造を持っていて、最初のピアノとストリングスによるアンビエントなものはメジャーともマイナーともつかないあやふやなところを浮遊している。そこから闇が吹き払われるような2ndイントロに突入していく。神戸を舞台にした家族の物語に阪神・淡路の大震災の経験が折り重なるドラマの内容に寄り添うように、より映像的な曲の構造やメロディ、歌詞には“祈り”が込められ、それが曲全体の重力となって心に残る。この2曲からは、ポップスとしていかに強度の高いサビを聴かせるかというシンプルな試みに、極限まで考え抜かれた曲の構造やアレンジを張り巡らせ、その上で決定打となるのはそれをいかに歌うかなのだという桑田佳祐の歌への強い信念が感じられる。そしてその信念を誰よりも信じてメロディに身を任せ表現できる歌い手が原 由子なのだ。

恋の歌を唄いましょう

涙の天使に微笑みを