SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

FEATURE

原 由子

20人の書き手が筆を取り、原 由子がメインボーカルを務めた楽曲やミュージシャン原 由子について語る特別企画。
原 由子の45年のキャリアを様々な角度から徹底解剖!

歌い手、作曲者として始まりの頃文=円堂都司昭

原 由子の歌が魅力的だと知ったのは、サザンオールスターズ『タイニイ・バブルス』(1980年)収録の「私はピアノ」からだ。少し鼻にかかった柔らかい歌声は、個性的で印象に残る。サザンで彼女が初めてリードボーカルを担当した曲だった。同年には高田みづえによるカバーもヒットしたが、オリジナルとは構成に違いがあった。曲は、過ぎた恋を想うメランコリックな内容だ。でも、サザン版には、男女がじゃれあうような、高田版にはないかけあいのパートが出てくる。作詞作曲の桑田佳祐が仕掛けたこの場面転換が、過去と現在の対比として効いている。おっとりとした原の持ち味をよく引き出した曲だ。
翌年の1981年、原は「I Love Youはひとりごと」でソロデビューする。それは、桑田流のきわどい詞を、ほんわかしていてきわどさから遠い原が、しれっと歌うところに面白さがあった。彼女のキャラクターを熟知した桑田の詞と曲を原はその後も多く歌い、2人の組みあわせは抜群だと思わせる。だが、今回注目したいのは「I Love Youはひとりごと」のB面「しっかり John-G」だ。それは、彼女が初めて発表した自作曲の1つであり、アコースティックギターを使ったアレンジで優しい歌声を聴かせている。素の彼女を感じさせる温かみのある曲である。どうしても才人桑田に隠れがちになるが、原自身もいい曲を書くのだ。その始まりがここにある。