SONG DATA
声に出して歌いたい日本文学〈Medley〉
桑田佳祐
作詞:- 作曲:桑田佳祐 編曲:桑田佳祐
18:42
musicians
『汚れつちまつた悲しみに……』 中原中也
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
たとへば狐の
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……
『智恵子抄』 高村光太郎
智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
智恵子は東京に空が無いといふ、
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
『人間失格』 太宰 治
自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。
自分は隣人と、ほとんど会話が出来ません。
そこで考え出したのは、道化でした。最後の求愛でした。
夕立ちが降った
ひどい耳だれで、念入りに耳の掃除をしてやりました。人間、失格。
いまは自分には、幸福も不幸もありません。
自分はことし、二十七になります。
白髪がめっきりふえたので、たいていの人から、四十以上に見られます。
子供相手の雑誌だけでなく、駅売りの粗悪で
汚いはだかの絵などを画いて、画いていました。人間、失格。
『みだれ髪』 与謝野晶子
やは肌のあつき
乳ぶさおさへ
いとせめてもゆるがままにもえしめよ斯くぞ覚ゆる暮れて行く春
春みじかし何に
人の子の恋をもとむる唇に毒ある蜜をわれぬらむ願ひ
『蜘蛛の糸』 芥川龍之介
ある日の事でございます。
独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。
この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当っておりますから、
水晶のような水を透き
丁度
地獄の底に、※
この男は、人を殺したり、悪事を働いた大泥坊、
それでもたった一つ、
蜘蛛を殺さず助けてやったからでございます。
御釈迦様は地獄の容子を御覧になりながら、
には蜘蛛を助けた事があるのを御思い出しになりました。
この男を地獄から救い出してやろうと御考えになりました。
『蟹工船』 小林多喜二
二人はデッキの手すりに寄りかかって、
海を抱え込んでいる函館の街を見ていた。
蟹の生ッ臭いにおいと人いきれのする「
香水か何かのように、ただよった……
諸君、とうとう来た!
長い間、長い間俺達は待っていた。
半殺しにされながらも、待っていた。今に見ろ、と。
しかし、とうとう来た。
俺達は力を合わせることだ。俺達は仲間を裏切らないことだ。
「おい、地獄さ
「ストライキだ。」
『たけくらべ』 樋口一葉
何時までも何時までも人形と紙雛さまとをあひ手にして
飯事ばかりして居たらば嘸かし嬉しき事ならんを、
ゑゝ厭や厭や、大人に成るは厭やな事、
何故このやうに年をば取る、
一年も
『一握の砂』 石川啄木
東海の
われ泣きぬれて
蟹とたわむる
いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握れば指のあひだより落つ
こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ
一握の砂
『吾輩は猫である』 夏目漱石
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
ある穏やかな日に大きな猫が前後不覚に寝ている。
彼は純粋の黒猫である。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
吾輩は猫である。名前はまだ無い。
『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治
銀河ステーション……
ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいでなんにも云えずに
早くお母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うと
もう一目散に河原を街の方へ走りました。