SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

presented byReal Sound

REVIEW

-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-

松永 良平 氏

真剣レビュー

『KAMAKURA』という明るいごった煮

 アルバムが発売されたのは高校2年の秋だった。1曲目「Computer Children」に針を落として感じた気持ちは、ひとことで言えば「波乱」。いつもの倍のボリュームでサザンを味わい尽くせるフルコースと思っていたアルバムは、想定外の要素が続くごった煮のような怪作だった。

 前作から起用された藤井丈司のマニュピレーションによる最新鋭のデジタル・サウンドが全体的に印象深いのはもちろん、もっと気になったのは、それまでのサザンにあった桑田メロディ、桑田節(歌唱法)と呼ぶべき要素の少なさだった。テクノロジーの進化で作曲方法が変わった? いや、むしろそれは意図的なものではなかったか。70年代のアメリカン・ロックやソウルをベースに発展させ、成熟していたメロディやサウンドを封印して、それでも残る「サザンらしさ」とは何なのか。それは、アルバム2枚いっぱいを使って未来のサザンを探す実験だった。この時期のヒット・シングルが「メロディ(Melody)」というタイトルなのは、偶然ではないのかも。そして今では『KAMAKURA』という明るいごった煮がなかったら、その後のサザンもなかったとすら思える。

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