REVIEW
-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-

岡村 詩野 氏
真剣レビュー
第2の“故郷”に向けた2枚組超大作
正式には「外苑西通り」という青山の「キラー通り」は、ファッショナブルな東京カルチャーの出発点のような場所。本作を含めたサザンオールスターズの作品は殆どがその「キラー通り」にあるビクタースタジオで録音されている。2枚組30曲、2時間超えの超大作となった本作は、一曲一曲に考えうる創意工夫をこれでもかとばかりに盛り込んでいて、もう一つの“故郷”をタイトルにつけただけあって、この時点でのサザンのキャリアすべてをかき集めたような内容だ。アルバム初期4作品が大好きな古参ファンの筆者は少し頑張りすぎだと発売当時思ったが、スティーヴィー・ワンダーさながらの「JUMP」、溌剌としたブラス・ロックの「ごめんよ僕が馬鹿だった」、オールディーズ調の「八月の詩(セレナード)」などシングルやタイアップ曲以外にジャパニーズ・ファンク・ポップ・ロック・バンドのオリジネイターたる気概が自然と発揮されていて、今聴いてもそれらの曲に本領が現れていると感じる。制作時期だった2003年〜2005年頃は、フェイスブック、iPodなどが世界的に注目され一気にIT化が進んだ時代だ。アイデアてんこ盛りの仕上がり自体は次々と押し寄せるそれらの情報に刺激を受けた結果だったのかもしれないが、だとしても、このボリュームなのに曲の良さが損なわれていないのはさすがだと改めて拍手を送りたい。