SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

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REVIEW

-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-

上野 三樹 氏

真剣レビュー

何でもアリだがこれぞサザン


 バンドがその名をタイトルに冠するとき、多くは「原点回帰作」もしくは「自分たちらしい自信作」ではないだろうか。前作『KAMAKURA』から個々のソロ活動をはさんで約4年半ぶりとなる今作は、セルフ・プロデュースで制作された。

 エレキサウンドで〈twist and shout〉な「フリフリ’65」で幕を開け、スペイン語ながら桑田佳祐のボーカルが見事にハマる「愛は花のように(Ole!)」、夏の忘れ得ぬ恋を歌う「YOU」、原 由子が歌う沖縄民謡風の「ナチカサヌ恋歌」、エロス漂う「女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)」、社会風刺ナンバー「政治家」も並び、“何でもアリだがこれぞサザン”の中枢を射抜くような1枚。

 ラストを飾るのは珠玉のバラード「逢いたくなった時に君はここにいない」。メンバーが30代になり初めてのアルバムということも関係してか、過ぎ去った日々への想いがためらいなく歌われて終わる。しかし次のアルバム『稲村ジェーン』も同時に制作していたからこそ、思い切りよく未練をここに置いていけたのかも。過去と未来を繋ぐ、まさに自らのバンド名を冠するにふさわしい傑作である。


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