REVIEW
-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-
ふくりゅう 氏
もしもレビュー
ブルース×AOR、ビートルズの再来か!?
愛と毒の切れ味の鋭い一生モノのアルバムだと確信。収録曲それぞれ、コンセプトやフォーマットが異なりながらも脅威の完成度を誇るオーパーツのような作品である。
冒頭を飾るザ・スパイダースよろしく、GSからの影響が感じられるレトロメイドな邦ロック「フリフリ'65」。スペイン語によるラテンポップな「愛は花のように (Ole!)」。山下達郎からの影響をピュアに感じられた「忘れられたBig Wave」。シティ・ポップな趣にキラキラポップな魔法を振りまいた「YOU」。琉球民謡を再構築した女性ヴォーカルによる悲恋の反戦歌「ナチカサヌ恋歌」。夏の終わりを予感させるバラード「OH, GIRL(悲しい胸のスクリーン)」。リズム&ブルースな天才的ファンクが突き刺さるエロティックな「女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)」。跳ねるビートが痛快なロックチューン「政治家」。そして、全方位でリスナーの感情を鷲掴みにする極上のポップアンセム「さよならベイビー」。
バラバラのようで一貫性は存在する。世界的ロックバンドを暗喩した、ジャケットのカブトムシによる交尾写真の如く、本作から新たなシーンがエモーショナルに爆誕しそうだ。