SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

presented byReal Sound

REVIEW

-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-

石井 恵梨子 氏

もしもレビュー

海の向こうの何かを目指して

海の向こうの何かになってみたいじゃないの! この感覚がとにかく強烈である。まずは邦ロックが入り口、そこから海外シーンのトレンドも押さえつつ、まぁ国内ロックフェスが主戦場ですというバンドが多い中で、この新人の視線はあくまで海外に向けられている。米英のポップ/ロックに限らない。なにしろ一曲目からスペイン語でかますラテンナンバー。とはいえルーツを持つメンバーがいるわけでもないらしく、曲ごとに参照がころころ変わっていく様子が一番ヘンテコで面白い。ビーチボーイズ愛に溢れたコーラスワーク、いにしえのイタリア映画に出てきそうなインスト、ちょっとマニアックすぎるくらいのビートルズ・オマージュ。造詣が深い反面、いきなり和田弘とマヒナスターズ(言ってみればこれも海の向こうのハワイである)を甦らせる感性は妙にチャーミング。多様な海外文化を追いかける研究者の顔と、それっぽくなりきって遊ぶ学祭のノリが同居しているよう。そしてまた、最も不思議に思えるのが数曲だけ出てくる王道のJ-POPバラード。これはどう捉えるべきなのか。サントラなので映画の世界観に寄せて書いた曲は多々あるだろう。今後オリジナルの軸足をどこに置くのかに注目したい。

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