REVIEW
-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-
兵庫 慎司 氏
もしもレビュー
まだあった、ミクスチャー・ロックの新しい手法
1990年前後頃に(おそらく)アメリカで生まれ、1990年代半ばから後半にかけて各国で人気になり、日本にも定着した、「ミクスチャー・ロック」と呼ばれる音楽。日本でしか使われない呼称だが、ロックとは別とされるジャンルの音楽と、ロックを合体させたり混ぜたりする手法で作られた音楽のことを指す。
2000年代以降、その王道の、いわゆる「ラップ+ロック」だけでなく、あらゆるジャンルがミックスされるようになって現在に至っているが、このバンドのような手法は、聴いたことがなかった。曲によって組み合わせ方は異なるが、アメリカン・ロック(特にサザン・ロック)、ブルース、ファンク、レゲエ、サンバ等々が渾然一体となっていて、それらが「昭和歌謡」でまとめ上げられている。ただ、日本的であると同時に、英語が載っても自然なメロディでもあるところが不思議。英語的な響きだけど、ちゃんと日本語の歌詞で、しかも聴き取りやすいのも、もっと不思議。発明だと思う、これ。あと「女呼んでブギ」のような、コンプラに厳しい今のメジャーからよくリリースできたな、という曲があるのも気になる。ワンマンならともかく、フェス等で歌ったら、怒られ放題に怒られそうで楽しみ。