SOUTHERN TIMES

サザン・タイムズ

presented byReal Sound

REVIEW

-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-

青木 優 氏

もしもレビュー

過剰なまでの性欲と、バンドの破格の雑食性

なんというエネルギー量! ブッ飛んだ言葉とポップなメロディの化学反応、それと一丸となったバンドの猪突猛進な攻撃性。これらが恋や愛のドラマを濃ゆめの歌に還元させてて、せつなさ、やるせなさ、悲しみ、喜び、寂しさ、楽しさ、浮かれる思い等々を目いっぱい表現してる。感情が落ち着くヒマがない。とりあえず、性欲強すぎだろ!

それにつけてもジャケ写の真ん中の桑田佳祐という青年の歌は、異常にクセが強い。歌声はちょっとハスキーで、それがエモーショナルに響きまくって、局面によってはユーモラス。しわがれたり、時にはダミ声まで使って喜怒哀楽を唄いまくる。その歌はハレンチで猥雑で、いなたさもあるのに、なぜかスマートさや上品さを感じさせるところもある。しかも不良で、ちょっと不謹慎で不埒。エロいというより、若い分だけエッチでスケベ。それは〈男は立てよ 行けよ女の元へ〉なんて言葉がシュパッと切り込む「思い過ごしも恋のうち」、〈だって 乱れて 翔んでる〉と意味性まで飛翔する「気分しだいで責めないで」など、ラテンロックのノリと相性がいい。かたや「ブルースへようこそ」では細野晴臣の初期のソロ作を連想させるトロピカルな中華風味を見せたり、ラストは大バラード「いとしのエリー」の一途な恋心の爆発で締めたりと、構成もニクい。千両役者である。

かようにブチ上げたり揺さぶったり、煽ったり笑わせたり、最後の最後には大泣きさせる。何なんだよ、こいつら! ライブがあれば、絶対に観に行かないと!

OTHER REVIEW

特設サイトはこちら