REVIEW
-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-
高橋 美穂 氏
もしもレビュー
限りなく奔放で誰にでも愛される猫のように
キュインキュイン泣きまくるギターとキラキラのピアノのイントロから、「ん!?」と思わせる。さらに間奏には踊るようなバイオリンと陽気なホイッスルが、後半にはジャジーなピアノと口笛が鳴り響く。しかも歌詞はすべて英詞ということで、お茶の間に打って出るにはパンチが強い。ジャンルが入り乱れ国境も突破するような「ふたりだけのパーティ ~ Tiny Bubbles」という1曲目から、強烈な個性を感じる。メインボーカルの桑田佳祐以外のメンバー――原由子がボーカルを務める、しっとりした歌謡曲「私はピアノ」や、松田弘がボーカルを務める、しみじみ美しいラブソング「松田の子守唄」も収録されており、秀でた個性の集合体であることも証明。人間味も表れており、特に「C調言葉に御用心」は、爽やかな曲調にも関わらずナンパな曲名で、どことなく照れ隠しのよう。さらに「働けロック・バンド (Workin' for T.V.)」では、疑問や怒りを切々と歌い上げている。なんて正直なんだろう。しっかりルーツに根を張りながら、オリジナリティやメッセージを解き放つことを恐れない、その方向性からは“愛される未来”が見えるようだ。