REVIEW
-音楽ライター30人が語るサザンのオリジナル・アルバム-
宮本 英夫 氏
もしもレビュー
昔々、若者が洋楽に憧れた時代があったとさ
バンド名からコテコテのディープ・ソウルかスワンプか、はたまた威勢のいいラテン・ロック・バンドを予想したが、まるっきりのハズレでもなかったか。洗練されたホーン・セクションが活躍するAOR調の1曲目「Hello My Love」から、明らかにマニアックでルーツ志向の洋楽、しかも古き良きアメリカ音楽への志向が聴こえてくる。「素顔で踊らせて」のパーカッションや「夜風のオン・ザ・ビーチ」のピアノから感じる都会のラテン・フィーリング、「恋の女のストーリー」のソウル・バラード風味。デューク・エリントンの笑顔が目に浮かぶような「我らパープー仲間」、いなたいブギーの「ラッパとおじさん(Dear M・Y’s Boogie)」、そして最高にファンキーなブルース「Let’s Take a Chance」と「Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)」。昔々、若者が洋楽というものに憧れた時代があってな…というセリフが現実になりつつある今、こんなバンドが活動しているだけで嬉しくなる。それにしても、この若いボーカリストの日本人離れしたブルージーなヴォイスと、「英語訛りの日本語」を駆使したセクシーな表現力、そしてシャウトの迫力には恐れ入った。そんなに売れなくてもいい、息の長い活動を期待したい。